悪人「落ちたか……この高さでは助かるまい」 手下「一応死体を確認しません?」

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    1 :名無しさん 2019/02/25(月) 21:51:03.305 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「クックック……ここまでだな、ヒーロー!」ジリ…

    ヒーロー「おのれっ……!」ジリ…

    ヒーロー「あっ!?」グラッ

    ヒーロー「あああああああっ……!」


    ヒュゥゥゥゥゥ…


    悪人「落ちたか……この崖の高さでは助かるまい」


    11 :名無しさん 2019/02/25(月) 21:54:13.849 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「さあ、帰るぞ!」

    手下「あのー」

    悪人「ん?」

    手下「一応死体を確認しません?」

    悪人「死体? こんな高さから落ちて生きてるわけないだろ」

    手下「でも、万が一ってこともありますし……もし生きてたら死ぬ気でリベンジに来ますよ、きっと」

    悪人「それはまずいな……」

    悪人「よし、ちゃんと死体を確認しよう!」


    14 :名無しさん 2019/02/25(月) 21:54:55.775 ID:10Ln2Bcyr.net

    手下有能


    19 :名無しさん 2019/02/25(月) 21:57:17.747 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「しかし……」

    悪人「この高さ……どうやって降りればいいんだ?」

    手下「飛び降りるとか?」

    悪人「飛び降りたら俺も死ぬだろうが!」

    手下「ごもっとも」

    悪人「仕方ない、崖の下に降りれるような階段がないか探してこい!」

    手下「アイアイサー!」


    24 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:00:19.679 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「どうだった?」

    手下「ダメですね、階段はありません!」

    悪人「くそっ、こうしてる間にもヒーローは息を吹き返してるかもしれんというのに……」

    手下「となると、打つ手は一つしかありませんね」

    悪人「どんな手だ?」

    手下「ロープで降りるんです!」

    悪人「マジで?」

    手下「マジです」


    27 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:03:46.383 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「といっても、ロープなんざ持ってないぞ」

    手下「ないなら作るしかありませんね」

    手下「さいわい、ここは山ですから、材料となる蔓はたっぷりあります」

    悪人「そこまでやんなくていいと思うけど……」

    手下「ですが、ちゃんと死体を確認しないと我々は枕を高くして寝れませんよ?」

    悪人「それもそうだな……作るか」


    29 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:06:39.347 ID:GTTqVG/J0.net

    手下「蔓同士をこうやってねじり合わせて、頑丈なロープにするんです」ネジネジ

    悪人「うまいな、お前」ネジネジ

    手下「子供の頃から図工は得意でしたからねえ」ネジネジ

    悪人「ったく、やっとヒーローを倒したのに、なんで内職みたいなことするはめに……」ネジネジ

    手下「ヒーローが崖から落ちないように追い詰めるべきでしたね」ネジネジ

    悪人「難しいこというなよ……」ネジネジ


    32 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:09:11.987 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「できた!」

    手下「これだけ長さがあれば大丈夫のはず!」

    悪人「だが、強度が足りなきゃ死ぬ……ちょっと二人で引っぱってみるか」

    手下「アイアイサー!」

    グググッ… グググッ…

    悪人「よし、これなら大人二人ぶら下がっても大丈夫だろ」

    手下「さっそくロープを木に結んで、崖下に垂らしましょう!」


    33 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:09:23.485 ID:LON4eWP5a.net

    なんかほのぼのする


    36 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:13:10.309 ID:GTTqVG/J0.net

    ヒュゥゥゥゥゥ…



    悪人「……こえー」

    悪人「なぁ、高さ50メートルはあるんだけど、マジでいくの?」

    手下「今さらなに怖気づいてんですか!」

    悪人「いや、これならもう100%死んでるって、確認作業いらないって」

    手下「そういうところから生き延びるから、奴はヒーローなんですよ」

    悪人「そういうもんかなぁ……。いくらヒーローだってこの高さから落ちたら死ぬと思うけど……」


    39 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:16:16.096 ID:GTTqVG/J0.net

    手下「じゃあ、お先にどうぞ」

    悪人「え、俺が先!?」

    手下「こういうことはやっぱり上司ファーストじゃないと」

    悪人「いやいやいや、公平にジャンケンで決めようよ!」

    手下「これ以上時間かけてたら、ヒーローが息を吹き返しちゃいますよ!」

    悪人「いや、だからお前が先に行けば……」

    手下「いいから行けっ!」グイッ

    悪人「バカ押すな! 分かった、行くよ! 行きますよ! ちくしょー!」


    40 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:17:43.751 ID:BrhW6AMFr.net

    手下つおい


    41 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:19:39.977 ID:GTTqVG/J0.net

    グイッ… グイッ… グイッ…

    悪人「こええええ……!」

    悪人「……」チラッ

    悪人「ひっ、すごい高さ!」

    手下「下見ちゃダメですよ! ロープだけに意識を集中するんです!」

    悪人「分かったよぉ……!」

    悪人「だけどもし、ヒーローがナイフかなんか投げてきてロープを切ったら――」

    手下「余計なこと考えないで下さい!」


    44 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:22:43.137 ID:GTTqVG/J0.net

    グイッ… グイッ… グイッ…

    悪人「やっと半分くらいまで来た……!」

    手下「あと少しです! 頑張りましょう!」

    悪人「……」チラッ

    悪人「だけど、まだすごい高さ! やっぱり引き返さない?」

    手下「なにいってんですか! こんなところから引き返せるわけないでしょう!」

    悪人「だって、また下見たら、一気に血の気が引いちゃって……」

    手下「下見るなっていったろうが!」

    ニャーン…

    悪人「ん?」


    45 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:26:19.780 ID:GTTqVG/J0.net

    子猫「ニャーン」

    悪人「なんで、こんなところに子猫が……!?」

    手下「猫は木登りとか得意なんで、この崖に登ったはいいが、降りれなくなったってとこですかね」

    悪人「……」

    悪人「おい、猫! 肩に乗れ!」

    子猫「ニャン」ピョコン

    悪人「安心しろ……俺が必ず地上まで降ろしてやるからな」

    手下(たまにかっこいいからずるいよなぁ……この人)


    46 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:29:43.845 ID:BrhW6AMFr.net

    悪人(悪い人ではない)


    47 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:30:11.292 ID:GTTqVG/J0.net

    ザッ ザッ

    悪人「やっと降りれたー!」

    手下「やったー!」

    子猫「ニャーン」

    悪人「いやー、人間やればできるもんだな」

    手下「ホントですね! 正直二人とも転落死ってオチになるかと……」

    悪人「さ、帰るか!」

    手下「いやいやいや、ヒーローの死体を確認しないと!」

    悪人「ああ、そういえば、忘れてた」

    手下「ったく、目的を忘れないで下さいよ」


    49 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:32:51.042 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「……どうだ?」

    手下「ダメです、見つかりません!」

    悪人「あの崖から落ちたなら、死体はこの辺になきゃおかしい……」

    悪人「ってことはやっぱり、ヒーローは生きてたのか!」

    手下「ええ、奇跡的に生き延びて、もう逃げてしまった可能性が高いですね」

    悪人「そんなぁ……マジかよぉ……。せっかくこんなに苦労したのに……」


    50 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:35:48.707 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「あーあ、終わった!」

    悪人「きっとヒーローは追い詰められて落ちた恨みで、パワーアップしてくるに違いない!」

    手下「でしょうね……」

    悪人「ということは、もはや俺たちに勝機はない!」

    悪人「手下よ、今日までご苦労だった」

    手下「なぜ突然?」

    悪人「奴のリベンジを受けるのは、俺だけで十分だ。お前まで巻き込みたくはない……」

    手下「悪人さん……」


    53 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:37:13.553 ID:GTTqVG/J0.net

    手下「いえ、俺は最期まであなたの手下です! どうかご一緒させて下さい!」

    悪人「……!」ジーン

    悪人「ありがとう……」グスッ


    ニャーン…


    二人「ん?」


    54 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:41:40.599 ID:GTTqVG/J0.net

    ヒーロー「……」

    子猫「ニャーン」

    悪人「おおっ、こんなところにヒーローが!?」

    手下「でかしたぞ、子猫!」

    子猫「ニャン!」

    ヒーロー「う、うう……」

    悪人「! さすがヒーロー、あの高さから落ちて、まだ息があるようだ。英雄というより化け物だな」

    手下「じゃあ、このままトドメを刺せば……!」

    悪人「……」


    55 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:44:34.542 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「いや、待て」

    手下「!」

    悪人「やはり、俺とこいつの決着がこんな形でついてしまうというのは納得いかん」

    悪人「救命処置を施すぞ!」

    手下「あなたなら、そういうと思ってましたよ」ニヤッ

    悪人「じゃあさっそく、心臓マッサージから始めよう!」

    手下「アイアイサー!」


    56 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:46:10.365 ID:GTTqVG/J0.net

    悪人「1、2……」ギュッギュッ

    ムニュッ

    悪人「ん!?」

    悪人「こ、この感触……この柔らかさは……!?」

    手下「どうしました?」

    悪人「ま、まさかこいつ……」ペロン

    ヒーロー「……」

    悪人(胸がある……ブラつけてる……)

    悪人「ってことは、こいつ女ァ!?」


    61 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:50:09.633 ID:GTTqVG/J0.net

    手下「え、知らなかったんですか?」

    悪人「え!? お前知ってたの!?」

    手下「だって声の高さや体のラインを見れば一目瞭然でしょう。気づかない方がおかしいかと」

    悪人「うっせえな! どうせ俺は彼女いない歴イコール年齢だよ!」

    手下「それはさておき、早くマッサージしてやらないとマジで死んじゃいますよ」

    悪人「そ、そうだな」ギュッギュッ

    手下(あーあ、耳まで真っ赤にしちゃって……)


    63 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:53:15.392 ID:GTTqVG/J0.net

    ヒーロー「う、ここは……」

    悪人「やっと目が覚めたか」

    ヒーロー「お前が助けてくれたのか?」

    悪人「あ、ああ……宿命のライバルにこんなつまらん死に方されてはかなわんからな」

    ヒ―ロー「……ありがとう」ニコッ

    悪人「あ、いや! 礼などいらん! 崖から落ちたのは俺のせいみたいなもんだしな、うん!」

    子猫「ニャーン」

    ヒーロー「この猫は?」

    悪人「崖で立ち往生してたから、俺が助けたんだ」

    ヒーロー「ふうん……」


    64 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:54:55.965 ID:xcG+eWR90.net

    俺「ふぅん……」


    65 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:55:50.004 ID:/Mrs9x+ad.net

    ぼく「ふうん…」


    66 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:56:32.775 ID:FJ4AGUXk0.net

    ただの良い奴


    67 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:56:54.855 ID:GTTqVG/J0.net

    ヒーロー「しかし、不思議だな……」

    ヒーロー「世の中には色んな悪党がいるが、お前は他の外道とは違う。筋が通っていて、男気もある」

    ヒーロー「なのに、なぜ悪人などやっているのか……」

    悪人「……」

    悪人「あ、あのさ……」

    ヒーロー「ん?」

    悪人「もし、お前が望むなら、これからはもっと悪事を控えめにしてもいいぜ」

    ヒーロー「本当か?」

    悪人「なんだったら、俺と手下も他の外道どもを倒す手伝いをしてもいい」

    ヒーロー「おおっ、それは嬉しい!」


    68 :名無しさん 2019/02/25(月) 22:58:31.771 ID:wvum6BQc0.net

    童貞って乳さわるとすぐ恋するよな


    70 :名無しさん 2019/02/25(月) 23:00:21.774 ID:GTTqVG/J0.net

    ヒーロー「ありがとう、ありがとう!」ギュッ

    悪人「お、おい抱きつくな! 俺はほとんど女に免疫が――」

    ヒーロー「なぁに、私も似たようなもんだ! 私たち、似た者同士いい仲になれそうだな!」

    悪人「そ、そ、そうですね……」デレー…

    子猫「ニャーン」

    手下「落ちたか……あの鼻の下の長さでは助かるまい」







    おわり


    72 :名無しさん 2019/02/25(月) 23:03:40.477 ID:hOkC8OpMd.net

    なるほどそういうオチか


    73 :名無しさん 2019/02/25(月) 23:04:18.557 ID:7N6YGYuld.net

    お見事


    76 :名無しさん 2019/02/25(月) 23:06:52.096 ID:LQWP1hO9r.net


    リア充落下しろ


    80 :名無しさん 2019/02/25(月) 23:09:53.243 ID:h52GZEUI0.net

    落語かよ


    この記事へのコメント